蔵住まいの心
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ことわざ四点

「ーに嫁とり、二に孫もうけ、三に宝の蔵を建て」
こんな歌が喜多方にはある。いい嫁を迎え、跡取りを決め、立派な蔵を建てればお家安泰、男の人生は万々歳だ、ということだ。

「仲人は蔵三つまではさばをよんでもよい」
本人の素性や人柄についての嘘は言えないが、家柄や資産の目安になる蔵の大小や数を少々大げさに語ることは多めに見る、ということ。

「年増女房は蔵が建つ」
年上の女性と結婚すれば、経済のやりくりがしっかり としているのて、自然と金がたまリ蔵が建つということ。

「男四十にして蔵をもてぬようでは、一人前とはいえない」
蔵をもつことが「男の甲斐性」と言われた喜多方の人々のメンタリティがよく表れている。

蔵座敷

蔵を単なる貯蔵のためではなく、そこて日常生活を送るため、あるいは客人を迎えることを目的にして建てたのが蔵座敷だ。それぞれに趣向を凝らし、建てた人の想いが込められており、喜多方の蔵の最大の特徴であり、魅力だといえる。隠居した旦那が暮らす、仏間と八畳程度の居室がひとつながりになった蔵座敷と、冠婚葬祭の集まりを催す事ができる何十畳という大広間の蔵座敷とがある。

蔵屋敷

喜多方には、全体が蔵造りの屋敷がいくつかみられる。 その代表例が、村松の上野利八家だ。広大な敷地には、三カ所の庭、二つの池、そして六棟の蔵がたくみに配置されている。玄関を入ると、正面と右手に重厚な黒漆喰の観音開きが構え、圧倒される。正面には板敷きの応接間が広がり、右手には茶の間、仏間、来客用の座敷がつづき、開放すれば四八畳の大広間になる。別棟の煉瓦蔵を改装して、趣味の品々が置かれたサロンにするなど、ご当主が楽しみながら、蔵ずまいを続けている。

鳥城

黒漆喰の偉容を放つ甲斐本店の別名である。巨大なカラスに見えることから、そう呼ばれる。蔵座敷は二十四畳と二十七畳の二間つづきで合わせて五十一畳もあり、喜多方を代表する豪華なものだ。四代目、甲斐吉五郎が四十歳から四十七歳までの男盛りの七年間を費やし、全国から銘木を集め贅をこらして建て られた。大勢の職人逹が近所でお金を使うため「甲斐様のお宅ではお金を刷っている」といわれたというエピソードも残っている。有料で公開されている。

蔵を引く

いわれのある蔵、貴重な蔵を引いて移築すること。大和川酒造店の八代目佐藤弥右衛門は、取リ壊されることになった老舗・年男酒造の蔵座敷をもらいうけ、土壁はすべて落とし、レールに丸太を交差させ、その上に骨組みだけを載せて引いてきた。警察に、「道路使用許可」願いを提出して、交通量の少ない早朝に作業が行われた。移築先に着いてから土壁と白漆喰を塗り直し、かかった経費は総額五千万円という。「蔵ずまい」にこだわる男の心意気といえるエピソードだ。 現在、その蔵座敷は、北方風土館の入りロに鎮座している。

(出典「蔵を知るミニ百科」 制作 喜多方蔵の会 文 須磨章)