アートとしての蔵
  1. HOME
  2. アートとしての蔵

黒漆喰

もともとは渋好みの江戸っ子が、粋だと好んだ黒塗りの壁。手間、暇、金のかかる贅沢な手法だ。
普通は観音開きの扉に使われるが、蔵全体を黒漆喰で塗り固めた例として、 “甲斐本店”がある。
なたね油を燃やしてつくる煤は、粒子が細かく色合いが深い最高級なものとされている。その煤を丁寧に濾して黒ノロとよばれるなめらかな塗料がつくられる。
白漆喰で仕上げたうえに、この黒ノ ロをごく薄く塗る。まっ白に黒を重ねることで、より深みのある黒の輝きが生まれる。ひび割れしない表面にするために、紙一枚といわれるほどの薄さが求められる。鏝で黒ノロをのばし、固まってくると、絹の布で表面を磨く。
仕上げは砥の粉をうって、素手でキュッキュッという音がでるまて磨き上げる。自分の顔が映り、鏡のようになれば完成だ。

観音開き

一段高くなっている蔵座敷などの入り口に構える土蔵造りの扉。
その重さを支えることも難しいが、扉の合わせ目を階段状にピタッと合わせる“掛子塗り”と呼ばれる技術が職人技だ。通常は開けておくが、火事の際などに閉めると段がぴったりと重なり、小さな火の粉の進入さえも許さない。

鏝絵

蔵の壁面に、鏝で浮き彫り風に描く絵のこと。
美しい鶴や鶏などの図柄が代表的。施主への感謝の気持ちを表すために、職人が腕を競ったといわれる。下三宮の集落に多く見られる。

家紋と屋号

蔵にはそれぞれの家紋や屋号が記されている。
凝った書体や美しく彫塑されたものには、蔵を建てた当主の家への誇りが感じられる。中には防火の願いをこめて「水」と記されている例もある。

厠蔵

まるで茶室を想わせるような風情のある蔵造りの厠を、時折みかける。
金田実が撮影した厠蔵は、白漆喰の壁に扉は見事な格子戸で、用を足しながらカマドの番ができるように工夫されていた。
外便所まで蔵造りにするところに、喜多方の人々のこだわりが感じられる。

煉瓦蔵

登り窯で煉瓦を焼いた樋口市郎と、東京に出て煉瓦積みの修行をつんだ田中又ーの二人三脚で喜多方にはおよそ100 棟の煉瓦蔵が、生み出されている。
明治37年に建てられた若喜商店の煉瓦蔵が第一号だといわれており、二階の窓の外側にしつらえられたバルコニ一風の装飾が明治の香りを感じさせる。
三津谷には、五世帯の農家に七棟の煉瓦蔵があり異国情緒を漂わせている。特に若菜正男家の家財道具蔵、作業蔵、味噌蔵、そして蔵座敷と四棟が中庭を囲む風景は圧巻だ。

(出典「蔵を知るミニ百科」 制作 喜多方蔵の会 文 須磨章)