喜多方の蔵を語る2
蔵とラーメン
【髙野局長】喜多方ラーメン。これも有名ですけれども。やはり喜多方ラーメンが出たとき、蔵の街の喜多方ラーメンというふうに、意訳されていたかと思います。やはりこの蔵を見に来る方々のために提供するものとしてラーメンがあったのかなと思います。やはり喜多方ラーメンの文化というのも、ベースにはやはりこの蔵というものが無ければ、今の喜多方ラーメンの文化が無かったと思います。蔵には、そういった価値を生み出すものがあると思います。これは文化といいますか、街づくりの柱が蔵ということを認識しています。だから蔵を守っていかなくちゃならないと思います。蔵を守るというのは、さっき文化の話しをしましたけれども、やっぱり蔵を守っていくことは、周囲の豊かな自然環境も守っていく、それが大事になってくるのかな。今地球温暖化の影響で気候変動が激しくなっております。その中で、一定の温度湿度を保てる蔵というのは、この温暖化に適応していく意味で、大事と思います。この蔵を守ることで、伝統産業の職人的な技術の承継や農業が守られていく。そして先程来の話題に上っているアートや音楽などの面で蔵を活用していくということ。新たな文化を生み出していく、そして地域づくりの柱でもあるので、蔵はやっぱり地域の宝だと思います。その磨き方が、どう見せていけるようにするかというところが、大事だと思います。その見せ方っていうのは色々あると思います。
見せ方に工夫を
【髙野局長】若松に住んでいますと、こんな話を聞く機会があります。それは、子供たちの中に飯盛山に行ったことがない子がいるというのです。会津若松市も平成の合併で市の統合がなされましたが、自宅と飯盛山との時間的距離は1時間もないので、子供たちに「そうなの?」と聞いてみたら、頷くんです。若松に住んでいて飯盛山に行ったことがない子供がいる。あと若い人たちも七日町でデートしてない。休みの時七日町を歩いてみると、他県の人たちの若いカップルや熟年カップルが歩いていましたが、地元の人が歩いていない。こういう状況からすると、「蔵も地元の人がどれだけ知ってるのかなぁ」という思いがあって、これからこの蔵を見せていくっていう2つのコンセプトがあると思います。地元の方や県外の方へのアプローチを区別するというところがあると思います。地元の人には、最近流行りのデジタルを上手く使えるかなって。デジタルで地元の方に蔵について、蔵の「カノウがこんなところにあるよ」とか「コテイがあるよ」とか、そういったところも含めて、なんでこうなるのとか、最近のデジタルのVRとかARとかいう技術を使い、この構造がどういう構造になっているとか、そういったところを詳しく、子供たちや大人の人にも構造の話を見てもらう。面白くなってくると思います。蔵の中ではこんな風に音が響いて、温度や湿度が保てるのかな、そういったのがVRとかARとかいう最近の技術を使うと、バーチャルに色々見せられるので、その仕掛けで見せていくと、地元の人もまた新たな発見が出てくると思いました。
県外から見た会津
【赤坂氏】前回の蔵の会で、一人の写真家を紹介させていただきました。この写真家は、木村伊兵衛賞という写真の若手の登竜門を通り抜けてきた、田附勝という東北の写真を撮っている写真家です。彼に喜多方の蔵の写真を撮ってもらいたいとお願いをしています。たしか6月に来て、撮影ケ所の蔵を探し、「見つかった」と言っていました。田附さんが写真家としてやりたいのは、蔵と共に暮らしてきた人たちの暮らしを、きちんと撮りたいと言います。つまり、喜多方の蔵もずいぶん写真として残されています。喜多方の蔵を紹介した写真家、故金田さんですね。金田さんの写真は景観としてとても面白い、美しい蔵の写真です。そういう見方も確かにできると思います。今、写真家田附勝がしようとしているのは、「そこに暮らす人と一緒に撮りたい」と言います。「蔵を開けて、開けた蔵から溢れ出すその家の歴史みたいなものが見てみたい」と言っていますね。その眼差しで蔵に向かう若者たちが現れたわけです。これは新たな発見です。髙野局長さんも言われましたけれども、よそ者が発見してくれることが結構あります。そこに住み、暮らしている人にとっては当たり前の風景を、よそから来た人が発見してくれるみたいな。それを十分に利用しながら、「おお蔵ってそんなに面白いのかって」いう感じ方を、喜多方の人たちはさらにそこに新たな関心を見出し、必要な契機が生まれればいいかなと今考えております。先ほど、髙野局長さんからお話をいただいて、局長さんは聞くところによると非常に文化に対して関心の強い方だと聞いています。関心がない人じゃしょうがないですよね、説得しようがないですね。そう例えば、蔵のなんか、この音とかって話を髙野さん言われましたけれども、わからない人にはわからないですよね。
大きな力を取り入れて
【赤坂氏】以前ですと、旦那衆の力だけで行ってきましたが、その後、喜多方市の力を取り入れて蔵を活用する動きがありました。しかし、今後は県とか国の文化庁の力を活用していくとか、伝建が良い例だったわけですけども、大きな巻き込み方をしていかないと、次の風景を作れないと感じています。
【矢部会長】今の時代に蔵を活かしていくことは、非常に難しい面もあり、また希望のある部分もあります。現状、今沢山のアーティストの方々が喜多方の蔵を、蔵と言わずとも街をお住いにされ、そこからインスパイアされて、喜多方を気に入っていただき、そこで制作をされている。ずいぶんおいでになります。これは日本の各地でそういう傾向がございます。例えば、三日前に山梨県の南アルプスの麓の北杜市に先輩がいて、「ぜひ一回山小屋来てくれ」なんて言うので行ってみました。その周りが小淵沢アートヴィレッジでした。こちらは陶芸の人、隣は自営人の方、もしくはテキスタイルのデザイナー、さらにそれぞれクリエイティブなお仕事に携わっている人たちでした。これらの人が歳を取ると次の人たちに相続的な人に渡しているようでした。この10年20年、一つの傾向にそういうのがあるとすれば、京都の町屋なんかもそうかもしれません。多くの中の一つの町屋としての蔵の街、という位置付けもあると感じていたわけです。
また、蔵というものをテーマに、一つそこから他のものと組み合わせることによって、新しい価値が生まれるというお話もありました。これを一つ大切にしていく手があると思います。また一つ、佐藤幹事長のように自発的に自分でやりたいという方向で自分が地元で取りたくなるものを作り上げていくという、これが非常に一番理想的ですけども、なかなか誰もがそういうわけにもいきません。一つそういう外のトレンドとかに乗っていくというやり方があると感じております。
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